禁煙外来
禁煙外来
2021年6月から禁煙補助薬チャンピックスの出荷が停止されていました。しかし、2025年10月30日から同薬の出荷が再開されたため、当院では11月11日から禁煙外来を再開しました。
禁煙しようと思っても、「病気」である「ニコチン依存症」になると、自分の力だけで禁煙に成功するのは難しいかもしれません。医師や薬のサポートを受けながら、お子さんやご家族、ご自身の健康のために禁煙しませんか?
禁煙治療を健康保険で受けるには、以下の4つの条件を満たしている必要があります。
下表の合計点数が5点以上で、ニコチン依存症と判定されます。
| 設問内容 | はい 1点 |
いいえ 0点 |
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| 問1 | 自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか。 | ||
| 問2 | 禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか。 | ||
| 問3 | 禁煙したり本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくてほしくてたまらなくなることがありましたか。 | ||
| 問4 | 禁煙したり本数を減らしたときに、次のどれかがありましたか。 (イライラ 、神経質、落ちつかない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加) |
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| 問5 | 上の症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか。 | ||
| 問6 | 重い病気にかかったときに、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか。 | ||
| 問7 | タバコのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。 | ||
| 問8 | タバコのために自分に精神的問題※が起きていると分かっていても、吸うことがありましたか。 | ||
| 問9 | 自分はタバコに依存していると感じることがありましたか。 | ||
| 問10 | タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか。 |
※禁煙治療で通院歴がある場合:初診通院日から1年未満だと、保険適用での治療の対象とならない場合がありますのでご注意ください。
※2016年4月から高校生など未成年者も対象になりました。なお、低年齢からの喫煙は依存症になりやすく、禁煙による将来の疾病予防の効果が大きいと期待されます。そのため、35歳未満は、喫煙本数や喫煙年数にかかわらず治療を受けることができます。
たばこがなかなかやめられないのは「意志が弱いからだ」と思い込んでいる人がいますが、禁煙できないのは、ニコチン依存症という病気のためだと、まず認識してください。ニコチン依存症の人はニコチンが切れるとイライラやストレスを感じるようになります。ここで喫煙すると脳波が一時的に正常に戻るだけでなく、快感物質(ドーパミン)も放出されるため、「たばこでリラックスできる」と錯覚してしまっているのです。
下の図は、タバコがやめられなくなるニコチンの負のスパイラルについてまとめたものです。

ニコチン依存症になりやすいのは、たばこの煙を吸い込んだ途端にニコチンが肺から急速に吸収されることも関係しています。喫煙を開始して約7秒でニコチンが作用し、イライラ解消が実感されるため、脳で喫煙がよいものだと認識され、ニコチン依存が強化されます。ただし、ニコチンの影響はなくなるのも早く、イライラやストレスが再び出現します。これが「ニコチン切れ」という離脱症状(禁断症状)です。
ニコチン依存症から抜け出すのは、ヘロインやコカインをやめるのと同じくらい難しいといわれています。依存症になる前に早めに禁煙に取り組みましょう。
「ニコチンは、ヘロインやコカインなどの麻薬と同じくらい依存性が高い」ことが下記に示されています。
・使用者が依存症になる割合:ニコチン > ヘロイン > コカイン > アルコール > カフェイン
・依存症になった人の禁断症状の強さ:アルコール > ヘロイン > ニコチン > コカイン > カフェイン
・依存症の人がやめる難しさの度合い:コカイン = ヘロイン = アルコール = ニコチン > カフェイン
医学的には、禁煙を短期的、あるいは長期的に続けると体の機能の改善や病気になるリスクが低下し、さまざまな効用が期待できることが明らかになっています。さらに、禁煙するとお金が貯まります。
下の図は、禁煙を続けた場合に良かったことを健康面と経済面に分けてまとめたものです。

治療期間は12週間に5回の通院です。費用は個々の治療条件によりますが、おおむね1日のたばこ代より安い金額で、自分だけでなく、周りの人の健康にも貢献できます。
下の図は、禁煙治療の流れをまとめたものです。

①初診時にすること
ニコチン依存症のチェック、呼気中の一酸化炭素濃度の測定健康状態を確認したうえで禁煙開始日の決定をし、禁煙宣言書のサインをします。禁煙補助薬を処方します。
②2~5回目の受診時にすること
初診から2週間目、4週間目、8週間目、12週間目に来院して頂きます。来院時には、呼気中の一酸化炭素濃度の測定を行い、体調や禁煙の状況の確認をし、継続のためのアドバイスや薬剤による副作用の有無の確認を行い、禁煙補助薬を毎回処方します。
通常、通院3回目(4週目)から4回目(8週目)になると、体調の変化を感じられる方が増えてきます。大事な事は、5回目まで継続して受診することが、その後の禁煙の持続につながる事が、データ上わかっています。是非、私たちと一緒に禁煙治療を最後まで続けましょう。
①チャンピックスの作用
チャンピックスは、脳内でニコチンが作用する部位に対して、部分的にニコチンと同じ働きをすることにより、比較的少量のドパミンを放出させ、禁煙することによる離脱症状を軽減し、タバコを吸いたくなる気持ちを和らげる作用を持っています。
さらに、チャンピックスを服用しているときに万一タバコを吸ってしまっても、ニコチンが作用する部位をブロックする働きも持っていますので、タバコから吸収したニコチンの作用をブロックすることにより、喫煙によるリラックス効果や快感を減らす作用がありまう。この作用によっても禁煙をサポートすることができます。
②チャンピックスの飲み方
1-3日目は0.5mgを一日一回食後に飲み、4-7日目は0.5mgを一日二回朝夕食後に飲み、8日目以降は1mgを一日二回朝夕食後に飲むという、徐々に量を増やしていく飲み方です。
これは、ニコチンの類似の効果で徐々に身体のニコチンへの依存を減らしていくという考え方のお薬なので、ニコチンが減ってきた後半はくすりの量をかわりに増やす形となります。
下の図は、チャンピックスの飲み方をまとめたものです。

③チャンピックスの副作用
まずは、禁煙に伴う諸症状が挙げられます。正確にはチャンピックスによる作用ではないのですが、気分が落ち込んでうつっぽくなってしまったり、不安でいてもたってもいられなくなったり、焦りを感じてしまったりといったことが禁煙に伴い出てくることがあります。これらは禁煙によるものですので、禁煙が成功すればなくなるものです。しかし、元々うつ病であったり、精神的に不安定な方は注意が必要です。
他に、チャンピックスそのものによる副作用として、目眩や眠気、意識障害が出ることがあるとされています。自動車の運転など、眠気や意識障害が危険になりうることは必ず控えてください。