
生活習慣病
生活習慣病
生活習慣病は、不健康な食生活や運動不足といった生活習慣が原因で発症する疾患です。喫煙、飲酒などが問題になることもあります。
以前は成人病と呼ばれていましたが、生活習慣を改善することで、病気になることを予防するという意味がこめられています。
最初は自覚症状の無い場合が多いですが、高血圧、脂質異常症、痛風、糖尿病などの病気に繋がるリスクがあります。健康診断で血圧やコレステロール値、尿酸値、血糖値の異常を指摘された場合は、早めに当院へ相談ください。
患者様一人一人の生活環境にあわせた治療や無理なく続けられる生活習慣の見直しを提案いたします。
心当たりの項目が多ければ多いほど、生活習慣病のリスクが高い状態と思われます。
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血圧が高い状態が続くことによって、血管の壁に圧力が掛り、その結果、血管を傷めて次第に血管が硬くなり動脈硬化へとつながります。その状態が続けば、脳卒中(脳出血・脳梗塞)、冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)、慢性腎臓病、心不全、心房細動、認知症などの罹患および死亡リスクが高くなります。
高血圧の原因は特定されていませんが、遺伝的要因と食生活(塩分の高い食事)や嗜好(喫煙・飲酒)過多、または運動不足や精神的なストレスなどの環境的要因が重なって引き起こされると考えられています。
降圧目標については、2025年8月に日本高血圧学会が発行した「高血圧管理・治療ガイドライン2025」において、以前までの年齢や合併症によって変わるものではなく、全ての成人高血圧患者さんで、次のようにシンプルで明快になりました。
・診察室血圧:130/80 mmHg未満
・家庭血圧:125/75 mmHg未満
家庭での血圧は、診察室よりもリラックスした状態で測れるため、診察室での血圧より正確に普段の血圧を反映すると考えられています。
高血圧の治療としては、血圧値や降圧剤投与の有無によらず、全ての高血圧の患者さんに生活習慣の改善を指導します。具体的には、減塩食、有酸素運動、適正体重の維持、節酒、禁煙です。
減塩目標は6 g/日未満で、具体的には、めん類の汁やスープを残すこと、みそ汁は1日1杯以内、大量に出にくいしょうゆさしを使うこと、漬物を控えること、塩味の濃い加工食品(ハム・ソーセージなど)を控えること、酢や香辛料など食塩の入っていない調味料を積極的に使うことを勧めています。
有酸素運動には、歩行、ジョギング、水泳などがあり、毎日30分以上、1回につき少なくとも10分以上継続し、合計時間として150〜300分/週が望ましいです。適正体重とは、BMI(体重[kg]÷身長[m]2)25未満で、それを維持することを勧めています。
生活習慣の改善だけでは目標降圧レベルを達成できない場合、降圧剤を処方します。当院の降圧剤としては、①カルシウム拮抗薬(きっこうやく)、②ARB、③ACE阻害薬(そがいやく)、④ループ利尿薬(りにょうやく)、⑤カリウム保持性(ほじせい)利尿薬、⑥MR拮抗薬、⑦β遮断薬(しゃだんやく)が挙げられます。
①カルシウム拮抗薬:血管の収縮にはカルシウム(以下Ca)イオンに重要な役割があり、Caイオンが細胞内に入ると血管が収縮します。Caイオンが細胞内に入るときにCaチャネルという通り道があり、本剤は、この通り道におけるイオンの流入を阻害し、血管の収縮を阻害させ、血管を拡張し、血圧を下げます。
②ARB:ARBは、アンジオテンシン受容体拮抗薬(Angiotensin II Receptor Blocker)の略称です。体内には、アンジオテンシンIIという血圧上昇などに関わる物質があります。本剤は、アンジオテンシンIIの受容体を阻害し、アンジオテンシンIIの血管を収縮させる作用を阻害し、血圧を低下させます。
③ACE阻害薬:血管を収縮させるアンジオテンシンIIは、アンジオテンシンIからアンジオテンシン変換酵素(ACE:Angiotensin Converting Enzyme)の働きにで変換されます。本剤は、ACEを阻害し、アンジオテンシンIIの生成を抑え、血圧の上昇を抑えます。
④ループ利尿薬:腎臓の尿細管では尿(原尿)に含まれる水分などを血管内(血液中)へ戻す再吸収が行われています。本剤は、尿細管の主にヘンレループでの再吸収を抑制することで、尿量を増やし、血液量を減少させて、血圧を下げます。
⑤カリウム保持性利尿薬:副腎皮質ホルモンのひとつであるアルドステロンは、腎臓の尿細管で、尿中のナトリウムイオンや水分を血液中へ戻す働き(再吸収)を促進させます。本剤は、尿細管におけるアルドステロンの作用を抑えることによって、ナトリウムイオンと水分の再吸収を抑え、血圧を下げます。
⑥MR拮抗薬:MRとは、Mineralocorticoid Receptorの略称です。本剤は、アルドステロンが作用する鉱質コルチコイド受容体に拮抗的に作用することによって、尿細管などにおけるアルドステロンの働きを阻害し、血圧を下げます。
⑦β遮断薬:心臓においては主に交感神経のβ1受容体が心臓の機能に関与しています。本剤は、β1受容体を遮断し、心機能の過度な亢進を抑え、心臓の仕事量を抑えることによって、血圧を下げます。
写真は、当院の降圧剤一覧です。左上がカルシウム拮抗薬(アムロジピン、ニフェジピンCR)、右上がARB(アジルサルタン、オルメサルタン)とACE阻害薬(エナラプリル)、左下がループ利尿薬(フロセミド)・カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトン)・MR拮抗薬(ミネブロ)、右下がβ遮断薬(ビソプロロール、アテノロール)です。この他にも在庫がありますが、当院で使用頻度の高い降圧剤が載っています。
下記は、各種降圧剤の主な副作用と注意点です。
①アムロジピン、ニフェジピンCR
・めまい、ふらつきなどが出現する場合がある。
・浮腫、ほてりなどが出現する場合がある。
・グレープフルーツに含まれる成分が本剤の代謝を阻害し、降圧作用などが増強する場合がある。
②アジルサルタン、オルメサルタン、エナラプリル
・めまい、ふらつきなどが出現する場合がある。
・エナラプリルでは、空咳が出現する場合がある。
③フロセミド、スピロノラクトン、ミネブロ
・フロセミドでは、低カリウム血症などの電解質異常が出現する場合がある。
・スピロノラクトンとミネブロでは、高カリウム血症などの電解質異常が出現する場合がある。
・スピロノラクトンに比べて、ミネブロは、女性化乳房や月経不順などの副作用が少ない。
④ビソプロロール、アテノロール
・呼吸困難、喘鳴などが出現する場合がある。
・脈がゆっくりになる場合がある。
血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)が多い為に引き起こされる疾患です。コレステロールには善玉コレステロール(HDL-C)と悪玉コレステロール(LDL-C)があり、善玉コレステロールは細胞内や血管内の余分な脂質を肝臓に戻す働きがある為、悪玉コレステロールを減らすことに役立っています。
脂質異常症と診断されるのは、高LDL-C血症、高TG(中性脂肪)血症、低HDL-C血症の場合です。これらの脂質異常症は、心筋梗塞や脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化性疾患の原因になります。動脈硬化性疾患は、総死亡の約22%を占め、発症すると日常生活の質が低下する重篤な病気です。
脂質異常症の主な原因は、食生活(カロリー過多)や嗜好(喫煙・飲酒)過多、運動不足、遺伝などが考えられます。
性別、年齢区分、危険因子など、個々の患者さんの背景は大きく違います。日本動脈硬化学会が編集した「脂質異常症診療ガイド2023」では、脂質管理目標について、写真のような設定法を示しています。
脂質異常症の治療としては、禁煙、食事療法、運動習慣といった生活習慣の改善をまず行います。食事療法としては、高LDL-C血症、高TG血症、低HDL-C血症の場合それぞれで次のように実施します。
①高LDL-C血症
・脂肪含有量の多い肉の脂身や動物性の脂(牛脂、ラード、バター)、加工肉製品、乳類、臓物類、卵類を減らす。
・未精製穀類、海藻、きのこ、緑黄色野菜を含めた野菜および大豆・大豆製品の摂取を増やす。
②高TG血症
・炭水化物を多く含む菓子類、糖含有飲料、穀類、糖質含有量の多い果物の摂取を減らす。
・アルコールの摂取量をできるだけ減らす。
③低HDL-C血症
・炭水化物を多く含む菓子類、糖含有飲料、穀類、糖質含有量の多い果物の摂取を減らす。
・トランス脂肪酸(マーガリン、ショートニングなどの加工油脂や、牛・羊肉・乳製品に多く含まれる)の摂取を控える。
脂質異常症の運動療法は、有酸素運動を中心に実施します。有酸素運動には、歩行、ジョギング、水泳などがあり、1日合計30分以上(短時間の運動を数回に分けて行ってもよい)を週3回以上(可能であれば毎日)、または週に150分以上を目標にします。
食事・運動療法など生活習慣を改善しても、血清脂質値が管理目標値に達しない場合、お薬を処方します。当院での治療薬としては、①スタチン系製剤、②小腸コレステロールトランスポーター阻害薬、③選択的PPARαモジュレーターなどが挙げられます。※PPARα:Peroxisome Proliferator -Activated Receptor-α
①スタチン系製剤:体内では主に肝臓においてコレステロール合成が行われており、コレステロールが合成される過程で必要なHMG-CoA還元酵素という物質があります。本剤は、このHMG-CoA還元酵素を阻害し、コレステロール合成を抑えることで、主にLDLコレステロールを減らす作用があります。
②小腸コレステロールトランスポーター阻害薬:食事及び胆汁由来のコレステロールは主に小腸で吸収されます。小腸でコレステロールが吸収されるとき、小腸コレステロールトランスポーターが運び屋的な役割をします。本剤は、この小腸コレステロールトランスポーターを阻害し、食事及び胆汁由来のコレステロールが血液中へ移行するのを抑え、LDLコレステロールを低下させます。
③選択的PPARαモジュレーター:PPARαとは、Peroxisome Proliferator -Activated Receptor-αの略称です。ペルオキシソーム増殖剤活性化レセプターとは、肝臓などで発現している核内受容体(蛋白質)で、ペルオキシソームが活性化されると、中性脂肪を加水分解します。本剤は、このペルオキシソームを活性化し、中性脂肪を低下させます。
写真は、当院の脂質異常症治療薬の一覧です。左2剤はスタチン系製剤(ロスバスタチン)、右から2番目は小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(エゼチミブ)、一番右は選択的PPARαモジュレーター(パルモディアXR)です。
以前は1日2回飲む薬が含まれていましたが、現在ではどの薬も1日1回飲む薬となっております。この他にも在庫がありますが、当院で使用頻度の高い脂質異常症の治療薬が載っています。
下記は、各種薬剤の主な副作用と注意点です。
①ロスバスタチン
・手足・肩・腰などの筋肉が痛む、手足がしびれたり力が入らない、全身がだるい、尿の色が赤褐色になる、などの横紋筋融解症が出現する場合がある。
・倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸などの肝機能障害が出現する場合がある。
②エゼチミブ:便秘、下痢、腹痛、腹部膨満感、吐き気などの消化器症状が出現する場合がある。
③パルモディアXR:胆石症、糖尿病(各1.4%)、CK(CPK)上昇(0.8%)などがある。
血液中の尿酸値が高くなった状態を「高尿酸血症」、その状態を放置して尿酸がたまり続け、足の親指の付け根や足首、膝などに痛みが起きる状態を「痛風」と言います。
尿酸は食品や体の細胞内にあるプリン体という物質が肝臓で代謝されてできる老廃物で、食べ過ぎやお酒の飲み過ぎが原因で増えてしまいます。
尿酸値を下げる治療を始める前に痛風発作が起こってしまったら,痛みや腫れを取り除く消炎鎮痛薬の湿布または飲み薬を使います。尿酸降下薬は痛風発作が治まった段階で始めます。
高尿酸血症と痛風の根本治療は、尿酸値6.0 mg/dL以下を目指した尿酸値の継続的なコントロールです。尿酸値6.0 mg/dL以下を保つと、体に沈着している尿酸の結晶が溶け出し、痛風発作や合併症のリスクが減るからです。高尿酸血症と痛風の治療として、次のような生活改善のポイントがあります。
①食事では、プリン体の摂りすぎに注意し、野菜、海藻、牛乳などのアルカリ性食品を積極的に摂る。
写真は、プリン体の多い食品、尿をアルカリ化および酸性化する食品をまとめた表です。
②アルコールを減らす:尿酸値を上げない一日の飲酒量の目安は、次のとおりです。
・ビール 500 mL ・焼酎25度 90 mL
・ウィスキーまたはブランデー40度 60 mL
・日本酒 180 mL ・ワイン 180 mL
③水分を十分に摂る:水やお茶で1日2L以上を目安に、積極的に水分を摂る。
④適度な有酸素運動をする:標準体重を目標に、歩行などの軽い有酸素運動を週3回程度継続する。
生活改善を実施しても高尿酸血症が改善しない、または次のような状態の患者さんには尿酸降下薬を飲むことが勧められます。
・痛風発作を起こしたことがある、または痛風結節(尿酸が皮下組織や関節に沈着したコブのようなもの)がある
・尿酸値8.0 mg/dL以上で合併症(腎障害、尿路結石、高血圧、狭心症、心筋梗塞、糖尿病など)がある
・尿酸値9.0 mg/dL以上
尿酸降下薬は作用の違いで尿酸排泄促進薬と尿酸生成抑制薬に分かれます。前者は腎臓に作用し尿酸が尿中へ排泄される働きを促進します。後者は主に肝臓でプリン体が尿酸に分解されるのを抑えます。
写真は、当院の尿酸降下薬です。1番左は尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロン)、左から2番目は尿酸生成抑制薬(アロプリノール)、右の2剤はアロプリノールとは違う構造の尿酸生成抑制薬(フェブキソスタット)です。アロプリノールがプリン骨格を持つ薬であるのに対し、フェブキソスタットはプリン骨格を持たない非プリン型選択的阻害薬です。フェブキソスタットは、アロプリノールよりも尿酸値をより強く下げる効果があります。
下記は、尿酸降下薬の主な副作用と注意点です。
・胃部不快感、吐き気などの消化器症状が出現することがある。
・倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸などの肝機能障害を疑う症状が出現することがある。
アルコール摂取量が少ないにもかかわらず、肝臓に脂肪が蓄積する病気です。脂肪がたまるだけの非アルコール性脂肪肝と、脂肪に加えて炎症や線維化を伴う非アルコール性脂肪肝炎に分けられます。非アルコール性脂肪肝炎は、肝硬変や肝臓がんへと進行するリスクがあるため、注意が必要です。
治療としては、カロリー制限などの食事療法や有酸素運動があります。
長期にわたる過剰なアルコール摂取によって肝臓が損傷を受ける病気です。症状は初期には自覚症状がない場合もありますが、脂肪肝から肝炎、肝硬変へ進行し、腹部膨満感、倦怠感、食欲不振、黄疸などが現れ、ついには肝がんに進行する可能性があります。
治療は禁酒または節酒です。
主に喫煙が原因で起こる肺の病気です。気管支や肺胞が炎症を起こし、空気の流れが悪くなることで、息切れや咳、痰などの症状が現れます。
治療で最も重要なのは禁煙で、薬物治療として気管支拡張薬やステロイド吸入が用います。